| 【Q0】 |
今、ライトノベルブームですよね!? |
| 水城 |
そうだっけ?
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| 【Q1】 |
ジュニア向けレーベルが確立されてから十数年が経ち、今やライトノベルは幅広い年齢層に支持されるようになりましたが……。
水城さんの作品はどのような読者層に支持されていると認識していますか? また、特に反響のある読者層はどういった人たちなのでしょうか。 |
| 水城 |
思ったより高年齢層は少ないよ? でもSFやミステリなんかのジャンル小説には明らかに作家も作品も吸収されてるようには思うから、それが受け入れられるってことなんだといえばそうなんだろうけど、高年齢にも受け入れられた作品の個々の反応を見る限りでは結局そのジャンルの良作を書いただけだよねぇ? ターゲットの年齢層が低いからってのはあるけど、ライトノベルだからって理由で高年齢から支持されてるって作品はわずかでしょ。
そうすると、低年齢層向けの作品なんだからブームや拡がりなんてありえないって言い方が正しいとしか思えない。ジャンルではないんだよね。もしジャンルとして考えるなら、そのブームにおいてライトノベルらしいとされているのが「若年層の諦念」を感じさせるものばかりなのは特徴的だと思うし、そっちのくくりで同じような人から支持されてる文学賞受賞作品もあるから、そういうジャンルだってことでいいんじゃない? つまり“「世の中は残酷で〜」とか「大人のシステムが変えられなくて〜」とかであきらめる作品”のブームはあったと思う。
そこは俺の場所じゃないし、そこから先の話がしたいから、俺の読者層は狭いかも。
実際、自分の場合は、思ったより低年齢に読まれていると思う。多分、ネットでこのページを見る人が想像するよりかなり低年齢。十一才とかから葉書があったり。諦念から先に行こうとするってのは、“純粋な意味での少年少女”か“精神年齢が高い”かであって、そういう人は低年齢か、逆に高年齢なんだけども、俺のは高年齢には届かないスタイルだから、ちょっとね。『ハーフダラー〜』は少し年齢を上げようとしたんだけど、それも失敗した感じ。やっぱりアンケートとか見ると下の年齢だったんだよ。
だから、社会に不満を感じたら「改善すれば?」って平気で言っちゃうような、大人になることに疑問を持たないような、そのままするすると大学に行って官僚になるような人間が子供の頃に読んでいる本って感じだとはホントに思うなぁ。コンプレックスで社会を逆恨みとかからは男女ともにすげぇ遠い感じ。
本人はまったく逆なんだよね。こんな商売やってるんだから(笑)。
ああ、読者からの反響はあんまりないよ。大人になったら読まない本だし。いわゆるハマるってのがないんだよね。あ、でも就職するときには思い出して欲しいかもなぁ。書いたのはどれも“仕事”の話だから。
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| 【Q2】 |
最近影響を受けた、または現在注目しているライトノベル作家は誰ですか? それはなぜですか? |
| 水城 |
ライトノベルって言っちゃうとさっきの定義の話になっちゃうから……ジャンル作品だったり、若年層に諦念しか提示しない作品ってのは自分は評価しないし。だからギャルゲー的な文脈を意図的に使用した作品も必然的に外れちゃう。
……それって現状ですごく少ないよね。だから、そうじゃない作品はそうじゃないってだけで評価してるし、注目してる。名前をあげると問題ありそうなんで言わないけど……。そういう作品は、大ヒットかまるで売れないかだから。
その理屈で行くと、影響ってのも受けちゃいけないことになる。妙な話だけど。
レーベルがあって、レーベルについているお客さんがいて……そういう場の影響はあるんだよ、確実に。どこで書くかってことが確実に自分に影響はしていると思う。でも、影響を受けた作品を念頭に置いて書くと、それってジャンルだから。
場の影響、レーベルの影響は確実に受けてる。それが何なのかは自分ではわからない。
でも、レーベルには積極的に注目していいと思う。
俺が言っていることって孤高とか孤立に聞こえるだろうけど違う。ごく簡単に言い切っちゃえば孤立=文学なんだけど、そうじゃないところは場によって俺の書くものが変わるから。変えている。それが変えられるのはエンタメだからだし、ライトノベルだから、でいいと思う。
文壇、とも違う。他の作家の影響は受けないし、評論もないから。
だから、“場”には注目してる。今だとやっぱり新レーベルでしょ。
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| 【Q3】 |
ズバリ、ライトノベルを執筆する魅力とは何でしょうか? |
| 水城 |
もしかしたら一番、純然たるエンタメに近い小説かもしれない、と思ってる。
映画だと宇宙船びゅーん、とかロボットどーん、みたいな作品でも大人が見るのに、小説だとSFにだけ押し込められちゃう。ライトノベルって名乗っておけばそこを突破できそうな魅力はあるよね。
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| 【Q4】 |
『ドラクロワLIGHT』を作ることになったきっかけをお聞かせください。 |
| 水城 |
さっきも言った通り、場の力だから。場所が違うだけで、ずいぶん書くものが違うんだよね。
でも場がないところで創作しようとすると、俺は孤立主義者でしかないわけ。文学気取りという言い方でもいいや。そう見えるって話ね。必然的にチームもチームである意味がない。それでも俺本人は場を必要としてるし……ってことろで素敵な場所が思いついた。
コミケだ!
創作においては世界最大の場だから、もうものすげぇんじゃないかしらと。さらにあそこには場しかないから。中身は関係ないからね。
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| 【Q5】 |
今回の作品が形になるまで、どのような経緯があったのでしょうか。アイデアワーク中のエピソードや、没になった企画などがあればお聞かせください。 |
| 水城 |
作ろうとすると、編集者とかの苦労の百分の一くらいはわかったかなぁ。
まず統一テーマが必要で……。当たり前だけど、技量の話を別にすれば、ライトノベル以外を書いても問題ないわけよ。このチャンスに純文学がやりたい! でもよかった。
だもんで、ライトノベルって何だろう? に戻って……。で、ロマンじゃね? と。
大河ロマンとか、学園ロマンとか、そういうものって本来的にはライトノベルが得意なはずなんだけど、商業だと難しいんだよねぇ。ああ、喧嘩売ってると思われる(笑)。そうじゃなくて実績がないと無理なのね。書かせてもらえない。それに、ロマンってはまるといいけど、基本的にはお客さんを裏切ってるわけ。作者の自分のロマンだから。商業でそれをやらないのはすごく正しい。
ロマンって、基本的に裏切りで、ジャンル小説じゃないという話を繰り返しているのもそこなのかもなぁ。ジャンル小説って作家もお客さんだから、ジャンル内のロマンは追究できるんだけど、個人的なロマンを求めると、ジャンルに対して明確に裏切りをすることになる。とすると、ジャンル小説を書く意味もなくなるという……。
で、個人的なものでコミケっぽいものを書くんだ、ということだけ突き詰めたから、最初は凄まじい企画だった。自分自身が主人公で、女子寮の管理人になるという。女子寮には好きなキャラしかいない。今だと斎藤桃子とか。実在声優じゃねぇか! とかそういう同人誌。
……もちろん反対されてやめた。「それがロマンかよ!」と。
さらに歴史物をやろうとしたんだけど、ロマンすぎて「イラストもいらないんじゃないか?」ってとこまでいった。「殺すぞ」って怒られたけど。
で……さらに考えて自分がロマンを感じるのはスポ根だった。それってもう死んでるからジャンルじゃないし。まぁ、何でロマンかは説明できないからロマンなんだけど。
さらにコミケ度を上げるために女子野球にして、それだとジャンルだからよりライトノベル的な何かがいるなぁ、と。さらにロマン度を増すんだから、女子野球ファンが見向きもしないというか怒り出すようなものがいい。リアリティを殺して野球ファンを裏切り、先入観を殺そうと。
で、カニ。
カニができてからは早かった。あっという間に全部完成した。
他の人の作品もロマンって以外のしばりを無くしたし、暗黙の了解でコミケっぽい、同人誌っぽいってのがある。さらに完成しなければしないで催促もしないから……かえって早く仕上がった気がする。それこそが場の力なんだと思うけど。
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| 【Q6】 |
この本では、それぞれの作者が独特の手法をとっていますが、水城さんが今回試みた手法の原点、アイデアはどこから得られたのでしょうか? |
| 水城 |
一人称で、章をオチごとに細かく区切ったのは四コマを意識したからで、一人称の視点保持者も誰かは書いていない。萌え四コマを意識したこういうスタイルで書いた人は他にもいるんだろうけど俺は知らなかったから楽しく書けたし、それこそ個人的なロマンだから。あととてもコミケっぽい。
あとは、商業でやってる奴のおまけにはしない、っていう個人的な縛りがあったから。外伝とか、裏設定資料集とか、没になった原稿とかそういうのはやめようと。一部のお客さんに迎合して、一部のお客さんを裏切るよりは、ロマンを追究して全部のお客さんを裏切ろうと。そうするとかえってアイデアは出しやすいものらしいね。
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| 【Q7】 |
執筆にあたって特に苦労された点をお聞かせください。 |
| 水城 |
まるで苦労しなかった。いやホント。
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| 【Q8】 |
作品に対して、スタッフからはどんな反応がありましたか? |
| 水城 |
まずはイラストレーターの反応が直接来たのは大きいなぁ。喧嘩はしてないけど、明らかに正面からぶつかってる。お互い、普通の仕事ならこんな危険なことできないって領域まで踏み込んでるから。お互いにとって危険なだけで他人にはわからないけど(笑)。こっちはしのざきさんの苦手領域を平気で書くし、向こうはキャラの新解釈を加えてくるという。初対面でやったら決裂するってば。顔をあわせての会話そのものは対談みたいなものだけだから、作品内でしかそういうことは起こっていないんだけど。これって、そんなに発生しない感覚なんだよねぇ。大抵はどっちかが先に手を引いちゃうから。
実際、文章だろうが絵だろうが上手い人はごろごろしているわけで、そこで経験的なものが明確に発揮される瞬間ってのは、そういう部分にしかない。うまくても経験がなければその種のコミュニケートはありえないし、それこそ実は商業では必要のない部分で、非常に同人誌的だし快感が強い。それがあるからみんなやってるんだなぁ、と実感が。
コミュニケートそのものの発生が“場”ってことに依存しているから、今回はその点でもすごく良かったと思う。面白かったのが、他のスタッフは小説を見た時点でまったくわからなかったみたいで。表紙が上がった時点で雰囲気変わったけど。「ああ、これがやりたかったのか」みたいな感じで。最初からわかれ。とはいいつつ、自分が参加しているチームが商業としてきちんとしようとしていることを意識していたことがわかったりしてね。そこもいろいろ面白かった。
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| 【Q9】 |
最後に、この本に興味を持っている皆さんに一言お願いします。 |
| 水城 |
もちろん買ってほしいけど、それ以上にコミケに参加してほしい。日記でなくフィクションを“書く”技量はイラストの技量の発展に比べて浸透がすごい遅れているから。
またプロであっても自作が“ジャンル外”ってことに自覚的な人は参加してみるべきだとは本当に思う。
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